劇団EOEのブレス&ヴォイストレーニング

こちらでは、劇団EOEの
ブレス&ヴォイストレーニングを簡単に紹介いたします。

劇団EOEでは、「発声練習」ではなく、
「ブレス&ヴォイストレーニング」と呼んでいます。
役者として、正しい発声方法を身につけるためだけではなく、
本番中、役者は台詞が無くとも、常に呼吸はしています。
それは、TVに出ている役者さんでも、映画に出ている役者さんでも
舞台に出ている役者さんでも、声優さんでも一緒です。

そして、その呼吸は常に変わっていきます。
驚いたら、速くなったり、リラックスしたら、遅くなったり。
だからこそ、本番中、その役の人間として、常に「生きる」ために、
呼吸に対する考え方は、より深めておくべきだと、劇団EOEでは考えております。

例えば、「腹式呼吸」という言葉、聞いたことがあると思います。
でも、「腹式呼吸って、どんな呼吸ですか?」と改めて聞かれると、
説明に困ったりしませんか。
もしかして、自分はよく分かっていないかもなんて思ったりしませんか。
「お腹に空気を入れる」なんて言っても、お腹に吸気は入りません。
意外と分からずに学ぼうとしていること、ありませんか。
劇団EOEでは、無料の体験稽古を開催しておりますが
その内容の一つは、この腹式呼吸を改めて考える、なんてことをしています。

「どうすれば腹式呼吸が出来るの?」
「そもそも腹式呼吸って何?」
「声がかれやすいんですけど。」
「大声が出るようになりたい。」
「長台詞がいえない。」
「声が続かない。」
「低音を出したいんです。」

など、こんな感じのご質問を頂くことも多いですが、
劇団でも使用しているテキストの一部を引用しておりますので、
劇団EOEの「呼吸」に対する考え方を垣間見て頂ければ幸いです。







まず、呼吸についてですが、劇団EOEでは、「生きる=息る」と考えます。この言葉は、どういうことかと言いますと、呼吸のレッスンは、発声のレッスンのためではなく、舞台の上で、常に生きるために行うレッスンということです。例えば、サッカーでは、90分の試合の中で、一人の選手がボールに触れている時間は、約2分と言われています。つまり、88分間は、ボールに触れていない状態でプレーを行っているのです。これは、舞台も一緒です。例えば、2時間の舞台を二人芝居で行ったとしても、一人が台詞を発している時間は、恐らく1時間もないでしょう。つまり、半分以上の時間を、台詞のない状態で「生きて」いなければならないのです。そして、台詞なく、舞台で生き続けるために大切になるのが、「呼吸」なのです。

そもそも、呼吸は、生命に根付いています。例えば、「いのち」の語源は、「息のうち」という説もあるほどです。それだけ、「いのち」には、呼吸が大切になってきます。そして、その「呼吸」ですが、「呼気」と「吸気」と書きます。つまり、文字の順番どおり、まず「呼気」ありきなのです。人間は、まず、生まれて初めてやる行為は、「産声をあげる」ことです。産声をあげることで、口や鼻に溜まっている羊水を吐き出し、呼吸を行えるようにします。その産声をあげるという行為ですが、それには当然、息を吐かなければなりません。つまり、人間は、生まれて初めてやる行為は、「息を吐くこと」になります。そして、人間は、いつか死を迎えますが、その際、「息を引き取る」という表現があります。息を引き取る、つまり、死者から託されたものが、息を引き取る、という形になります。これは、亡くなった方から見れば、息を吐くことになります。つまり、人間は生まれて最後にやる行為は、「息を吐くこと」になります。

このように考えると、「人間は、最初に息を吐き、最後に息を吐く。」という言い方が出来ると思います。つまり、呼吸を考える当たって、まず「吐く」という行為が大切になってきます。

「生きることは、息ること」ですが、呼吸は、感情にも、密接に繋がります。例えば、ビックリして心臓がドキドキしたとき、呼吸は自然と速くなります。あるいは、気持ちのいい露天風呂なんかに入り、リラックスした時には、呼吸は自然にゆっくりとなります。このように、感情とともに呼吸は変化します。これは、逆もまた真なりで、呼吸を変えることで、感情を変えることも出来ます。例えば、早く浅い呼吸をするだけで、不安感が高揚されたり、ゆっくりと深く呼吸するだけで、自然と気持ちが落ち着いてきたりします。このことは、恐らく、誰もが大切な試験の前なんかに、今までに一度は経験したことがあると思います。それだけ、呼吸というものは感情と密接なものです。言葉で考えてみても、「息(いき)=生きる」となります。つまり、生物学的な意味だけではなく、呼吸をすることは、生きることなのです。役者が舞台上で生き抜くためには、嘘の呼吸をしてはいけないのです。嘘の呼吸はお客様に一瞬で嘘だと見抜かれます。

長台詞などの時に、声が上ずったり、息が続かなかったりするのは、その台詞の前にしっかりと息が吸えていないということが原因ではありません。舞台の場合、呼吸の問題に限らず、問題が生じた場合、その原因は、更にその前にあることが多いです。今回の場合、それはどういうことかというと、息が吸えないことが問題なのではなく、その前に、息を少ししか吐いていないため、当然ながら、少しの息しか入ってこないという状態であるということが問題なのです。そもそも、「呼吸」という言葉は、「呼気」と「吸気」という言葉から出来ています。つまり、「呼吸」は、「呼気」がまず最初にありきなものであり、しっかりと吐き切ることが、呼吸では一番大切なことなのです。呼気をしっかりと良い状態で吐き切れば、吸気は自然と肺の中に入ってきます。必死に吸おうとしなくても、握りつぶしたスポンジを水の中に入れて手を離した時のように、呼吸は肺に自然と入ってきます。ですので、吸おう吸おうと意識して無駄な力が入り、力むのではなく、呼気をしっかりと吐き切るのを心がけることが大切です。

そこで、呼吸法を考えていきたいのですが、そもそも、どのようなやり方でも、肺に空気が入るという事実は変わりません。そして、その肺は、食器を洗うスポンジのように、小さくなれば、空気を吐き、大きくなれば、空気を吸います。ですが、呼吸法で、問題なのは、肺が自分では動けないということです。

ですので、この肺を動かすには、肺の周りにある筋肉などを用いて、間接的に動かさなければなりません。そして、その動かし方は、大別して、肩式呼吸、胸式呼吸、腹式呼吸の3つとなります。

まず、肩式呼吸は、肺の最上部である肺尖から、肩の筋肉を上下させて、肺を動かす呼吸です。例えば、短距離を走った後の、「ハー、ハー」といった呼吸を思い出せば早いでしょう。また、妊婦さんも、この呼吸法を使っています。

胸式呼吸は、胸郭を用いて、肺を横から動かすやり方です。立った状態では、重力に逆らわない呼吸法なので、通常は、胸式呼吸で、呼吸を行っています。 そして、腹式呼吸は、肺の最下部である肺底の直下にある横隔膜を上下させることで、肺を下から、大きくしたり、小さくしたりする呼吸方法です。

横隔膜は、体側から見ると、胸側、背中側ともに、一番下の肋骨の位置にあります。この横隔膜を動かすことが、腹式呼吸の狙いですが、横隔膜は、吸気時しか自分で動くことが出来ません。そこで、最終的には、骨盤底の筋肉を用いることで、横隔膜を上下させます。つまり、骨盤底の筋肉を用いることで、最終的に横隔膜を上に持ち上げ、逆に、骨盤底の筋肉を緩めることで、横隔膜より下の組織が下がってきても対応できるようなスペースを作ります。

つまり、横隔膜を上下させるには、肉眼では見ることの出来ない骨盤底の動きが重要なポイントになってきます。また、腹式呼吸というと、見た目では、文字通り、お腹の方に目が行きやすいですが、横隔膜自体が背中側の方が下部にあるため、お腹よりも腰やお尻の意識がより重要となります。

また、上記のような腹式呼吸を行うには、上半身は出来るだけ緩み、骨盤・肩・頭のバランスが保っている姿勢になる必要があります。ですので、特に骨盤底を用いるために、上半身ではなく、下半身を用いた呼吸法に切り替える必要があります。

そして、声の話になりますが、まずはどうやって声が生まれるか、その原理を説明します。肺から出た空気は気管を通り声帯の間を通り抜けます。この声帯が閉じたり開いたりして空気を通過させ、激しく震え始め、この振動が音を生み出します。そして、この音が、口・鼻などで共鳴して、最終的に声となります。ですので、口や舌等の形により、音は変わります。こうして考えると、声を生み出すには、声帯が非常に重要な役割を果たしているのが分かると思いますが、この声帯は筋肉です。ですので、使い過ぎれば、当然疲労していきますし、いきなり使おうとしても、ちゃんとウォーミングアップしてないと、ケガのもとです。ですので、発声の際は、いきなり声を出すのではなく、まずは呼吸を通すことを心がけてください。最初はS音で行います。S音は声帯を震わすことがありません。ちなみに、喉仏に指を当てて、S音を出した場合と、他の音を出した場合の違いを感じれば、そのことが分かるかと思います。そして、S音で温まってきたら、声帯を多少振るわせるZ音に徐々にシフトしていきます。もし、「S音って、何?」と分からなければ、「私は、山田です。」と言ってみてください。その時、最後の「す」は「su」ではなく「s」になっていると思います。その音が、S音です。また、呼吸は、「鼻から吸って口から出すが基本」と言われています。鼻から吸うことで、喉の大敵であるゴミと乾燥した空気の侵入を防ぎます。但し、最初のうちは、あまり気にしなくても構いません。